熱加工と非熱加工

レーザ加工における品質

レーザ光と材料との間で起こる加工現象は、加工品質に大きく影響する。
ここでは、非熱加工を例にとって加工品質に影響する要因について説明する。

加工品質に影響する要因

1.加工部周辺の熱損傷

熱影響を材料に極力与えないことで、レーザ加工における加工品質は向上する。
特に微細な加工が求められる非熱加工では、加工部周辺への熱損傷(加工エッジの溶融ダレなど)
の低減が求められる。

熱損傷は、照射されたレーザ光が材料のアブレーション加工以外に作用した熱エネルギーに
よって起こる。(参照:熱加工と非熱加工における図
この熱損傷の要因となる熱エネルギーは、加工に用いられるレーザ光の条件に大きく影響する。

  • 出力:
     レーザ光の出力が高ければ高いほど材料に与える熱エネルギーは増大する。
  • 波長:
     材料の吸収率が高いほど熱影響が低減される。
  • パルス幅:
     パルス幅は、パルスレーザから照射される1パルス当たりのレーザ光が材料に熱作用する
     時間と考えることができるため、パルス幅が短くなればなるほど熱影響を低減することができる。
  • 繰り返し周波数:
     繰り返し周波数は、1秒間に照射されるパルス数である。
     繰り返し周波数が高くなればなるほど、パルス間の時間間隔が短くなる。
     そのため加工部では、先に照射されたパルスの熱エネルギーが消える前に、
     次のパルスが到達することになるため熱作用の度合いが増大し、熱影響が生じる原因になる。

2.加工形状の確保

加工幅、加工エッジ、加工精度なども、加工品質を考慮する上で重要となる。
これらはレーザ光(波長)と光学レンズの性能で決まる。

レーザ加工における光学レンズの役割は、拡がってくるレーザ光を平行光に変換したり、
集光や結像したりすることであるが、特に集光や結像する際に、その性能が加工品質に
大きく影響する。
光学レンズには“収差”の問題があるからだ。

収差以外に加工品質に影響する要因としては、光学レンズの焦点距離や焦点深度、光学機器
による加工位置精度が挙げられる。

  • 光学レンズの収差:
     レーザ光を集光する際に、どれだけ小さく絞れるかはレーザ光の波長と光学レンズの性能で決まる。
     1点にレーザ光を集光する際に完全にレーザ光を絞り切れない(像がぼやけてしまう)場合、
     光学レンズの収差が原因になっている場合が多い。
     収差には、レーザ光を単色と考えた場合5種類の収差が存在するが、レーザ加工を行う上で
     最も注意するべき収差は、以下の2種類の収差である。
    • ・レーザ光を集光する際に起こる球面収差(レーザ光が絞り切れなくなる)
    • ・結像光学系を使って縮小投影する際に起こる歪曲収差(レーザ光の像が歪む)

     この2つの収差の決定的な違いは、
    • ・球面収差は集光した点がボケて大きくなるのに対し、歪曲収差は結像された点は
       ボケることのない収差である(歪曲する)。
    • ・球面収差は、光学レンズへのレーザ光の入射径を小さくする(口径を絞る)ことで
       改善することができるのに対し、歪曲収差は改善されることがない。
     ということである。
     ゆえに、マスクイメージ(特に矩形イメージ)を投影して加工を行う結像光学系以外では
     歪曲収差の影響はなく、球面収差によるスポット径の増大が加工品質に大きく影響する
     といえる。

    球面収差
    球面収差

     球面収差では、レンズに入射したレーザ光が光軸からの距離(入射光高さ)が離れるほど
     光の屈折角が大きくなるため、レンズ中央部とレンズ端部を通ったレーザ光とで、
     集光位置までの距離(焦点位置)がずれることになり、レンズの焦点がボケる要因となる。
     そのため、集光点上でレーザ光が1点に集まらずスポット径が大きくなってしまうのである。
  • 光学レンズの焦点距離:
     光学レンズの焦点距離とは、簡単にいえばレンズから集光点までの距離になる。
     (厳密にいうと、レンズの主点から結像点までの距離) 
     焦点距離が長ければ長いほど、集光するスポット径は大きくなる(球面収差の度合いは小さくなる)。
     また、焦点距離が長くなることで集光角(入射NA)が小さくなるため、加工の際のテーパー角が
     小さくなる。
  • 光学レンズ焦点深度:
     レーザ光を集光した際にできるスポット径が光学的に同じ径であると見なされる範囲が
     焦点深度である。 
    MEMO
    焦点深度=レイリーの範囲:スポット半径の2√2倍の径に拡がるまでの範囲
     レンズの焦点距離が長ければ長いほど焦点深度が深くなり、焦点深度が深くなれば
     なるほど焦点位置に許容範囲ができるため、材料の厚さのバラツキに対する許容範囲が
     広がる。
     また、焦点深度が深ければ深いほどアスペクト比(入射加工径と加工深さの比)の高い加工
     を行うことができる。

    焦点深度とレイリーの範囲
    焦点深度(レイリーの範囲)

  • 光学機器による加工位置精度:
     加工位置精度は、光学系により異なる。
     固定光学系(集光光学系)であればステージの精度で決まるため高精度の加工を行うことができる。
     一方で、加工タクトを上げるためスキャニング光学系を使用した場合、加工位置精度は
     固定光学系よりも劣る。
     スキャニング光学系の場合の加工位置精度は、アナログ式のスキャナニング光学系で
     ±10μm、デジタル式のスキャナニング光学系で±5μm以下となる。
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